2025年5月28日水曜日

血栓傾向、出血傾向をきたしうる凝固・線溶系の異常

 血栓症リスクとなるもの

    遺伝性    抗凝固因子欠乏症:プロテインC欠損症、プロテインS欠損症、アンチトロンビン欠損症、リポ蛋白(a)血症

    後天性 抗リン脂質抗体症候群(APS)、悪性腫瘍関連血栓症(CAT)、播種性血管内凝固症候群(DIC)

    薬剤性    性ホルモン製剤、副腎皮質ステロイド薬、トラネキサム酸


出血リスクとなるもの

    遺伝性    血友病、その他の凝固因子欠乏症、von Willbrand病

    後天性    播種性血管内凝固症候群(DIC)、肝機能障害、ビタミンK欠乏症

    薬剤性    抗凝固薬(ワールファリンなど)


原因が分からない脳梗塞がある場合には、上記のこともチェックする必要があります。



2025年5月27日火曜日

脳卒中みたいな病気

 脳卒中以外の疾患であるにもかかわらず、脳卒中に類似した臨床像を呈する病態をstroke mimicsと呼ぶ

stroke mimicsへの遭遇頻度は総じて25%と決して少なくないが、適切な画像検査の追加で脳卒中との鑑別が容易となる。

stroke mimicsの代表疾患には、「末梢性めまい」「低血糖」「痙攣」「精神疾患」「片頭痛」

「敗血症」「脳腫瘍」「多発性硬化症」「脊髄硬膜外血腫」が含まれる

stroke mimicsと脳卒中の鑑別のために、いくつかのスコアが提唱されているが、評価の主要なポイントは「高齢、心房細動、高血圧などの脳卒中の危険因子がない」ことである。

stroke mimicsを必要以上におそれて脳卒中超急性期治療導入を躊躇する態度は勧められない。


stroke mimicの反対で、本来は脳卒中であるが、脳卒中らしくない所見のため、脳卒中以外の疾患と診断されてしまう病態を「stroke chameleons]と呼ぶ。精神疾患や、失神、感染症、急性冠動脈症候群、末梢性めまい、末梢神経障害などが多い。具体的には「意識障害やせん妄が目立ち、麻痺などの局所症状が適切に評価されない場合」に、「失語、失行、失認などの高次脳機能障害を行動異常として5人される場合」や、「脳卒中の合併症として生じた感染症が神経徴候を修飾してしまい、症状の原因疾患として捉えられしまう場合」などがある。


若年者の脳卒中、、、年寄りだけの病気じゃない!

  1.  全脳卒中における若年者の割合は、50歳以下で8.9%、45歳以下で4.2%、40歳以下で2.2%と若年であるほど頻度が低い
  2. 若年者(50歳以下)の脳卒中の病型別割合は、脳梗塞36.7%、TIA5.0%で虚血性脳卒中が41.7%であった。一方、出血性脳卒中の割合は脳出血32.1%、くも膜下出血26.1%と高齢者に比較して多かった。
  3. 脳梗塞の病型別では、若年者ではラクナ梗塞が36.4%と最も多く、高齢者と同様であった。「その他の脳梗塞」は25.1%と2番目に多く、高齢者の2.8%と比較して有意に多かった。
  4. 背景因子として、若年者では、喫煙者と卵円孔開存(PFO)例の割合が高齢者に比較して有意に多かった。
  5. 若年者の「その他の脳梗塞」の原因として、動脈解離、もやもや病(Willis動脈輪閉塞症)、抗リン脂質抗体症候群(APS)の順に多かった。さらに線維筋性形成異常症(FMD)、脳静脈・静脈洞血栓症、多血症、妊娠や分娩、片頭痛、経口避妊薬などがある。
そもそも若年者は脳卒中の頻度が少ないので、診断が見逃されたり遅れたりすることがあるので、注意が必要である。