2014年9月22日月曜日

脳ドックで頚動脈が細いと言われたら、、

頚動脈が細いことを頚動脈狭窄症(けいどうみゃくきょうさくしょう)と言います。
頚動脈に動脈硬化が起こり、コレステロールなどが壁にたまって細くなっていきます。
このような状況では、本来血管の内側を滑らかにしている内皮細胞が壊れていまいます。
ちょうどなかなか治らない、じゅくじゅくした傷を思い出してください。
そのためこれらが崩れてたり、そこにできた血栓が流れて脳の血管を塞いでしまったりします。これにより脳梗塞が引き起こされます。
ATIS WEBより引用
これらの治療は

  1. 内服薬治療:抗血小板剤(バイアスピリン、バファリン、プラビックス、プレタールなど)
  2. 動脈硬化悪化させない:血圧、コレステロール、糖尿病などの管理が必要です。
  3. 外科的治療:頚動脈内膜剥離術、頚動脈ステント留置術
これらを行いながら、さらに全身の動脈硬化のチェックを進めていきます。
ただし、たまたま脳ドックなどでたまたま見つかった場合にはどうすればいいのでしょうか。現在内科的治療が進歩しており、症状(脳梗塞、一過性脳虚血発作)の無い場合には、いきなり手術までは必要はありません。ただし、急速な進行は脳梗塞を起こす危険性が高くになると言われています。しっかり内科的治療をして、定期的な観察が大切です。

文献
1)Liam S. Hirt. Progression Rate and Ipsilateral Neurological Events in Asymptomatic Carotid Stenosis. Stroke 2014:45:702-706

2014年9月11日木曜日

10月29日は「世界脳卒中デー(World Stroke Day)」

今、世界では、6人に1人が一生のうちに脳卒中を発症しています。日本のみでの統計では、5人に1人の割合で脳卒中を発症し、9人に1人が脳卒中でなくなっています。

脳卒中について一度ご家族で話してみましょう.


未破裂動脈瘤の破裂予測2

日本での未破裂脳動脈瘤の自然歴を明らかにしようとした研究に、Small Unruptured Aneurysm Verification Study (SUAVe研究)とUnruputured Cerebral Aneurysm Study Japan (UCAS Japan)がある。
【SUAVe研究】全国12の国立病院とナショナルセンターを中心に、2000年9月から2004年1月までの間、新規に発見された未破裂脳動脈瘤患者374例(448動脈瘤)の自然歴が解析されています(1)。
・全体の出血率は年間0.54%
 観察期間がながくなると年間の破裂率は低下していき、一定の値に収束
 破裂に関与する独立危険因子:高血圧、50歳未満、多発、動脈瘤径4mm以上

・脳動脈瘤増大率は年間1.93%
 増大の危険因子:女性、現在の喫煙、多発、動脈瘤径4mm以上

【UCAS Japan】日本の28施設において、2001年1月から2004年4月までに発見された未破裂脳動脈瘤患者5,720例(6,697動脈瘤)を対象にした研究(2)。
・年間出血率は0.95%
・破裂に関与する独立危険因子:ブレブ(*)の有無、部位、大きさ

<まとめ>
・日本人の未破裂脳動脈瘤の出血率は欧米人より高い
・未破裂脳動脈瘤の出血率は大きさ、部位により異なる。大きさについては大きいほど出血しやすい。日本人の場合、部位別では後交通動脈分岐部や前交通動脈瘤が出血しやすい
・部位、大きさ以外に出血率を高める因子としては、ブレブの存在、多発、高血圧、若年(50歳以下)などがある。
・観察期間が延長していくと動脈瘤の破裂率は低下していき、一定の値に収束していく傾向がある。すなわち、発見されてから数年間の経過観察で、形状や大きさが変化していない脳動脈瘤の破裂の危険性は低い


文献
1)Sonobe M et al: Small unruptured intracranial aneurysm verification study: SUAVe study , Japan. Stroke 41: 1969-1977,2010
2)  UCAS Japan Investigators; Morita A et al: The natural course of enraptured cerebral aneurysms in a Japanese cohort. N Engl J Med 366:2474-2482
未破裂脳動脈瘤のコイル塞栓術