2025年6月30日月曜日

日本の夏はどうなるのか、、、熱中症だけじゃない、脳梗塞も増える時期

 ここ数年、日本の梅雨は昔の梅雨ではなくなっている印象、常に蒸し暑く亜熱帯となっている感じですね。明日から7月になりますが、すでに猛暑日の地域もあり、熱中症に注意が必要です。外での作業だけでなく、家の中でも注意が必要です。

熱いところにいると、熱中枢がおかしくなって発症するのが熱中症ですが、手足のしびれ、めまい、立ちくらみ、筋肉のこむら返りなどで、少し進むと、頭痛、吐き気、嘔吐、力が入らないなどの症状が現れます。夏場にこのような症状が現れたら、直ちに涼しい場所に移動して水分と塩分をとって安静にし、回復する気配がなければ医療機関を受診するか、場合によっては救急車の要請もためらってはいけません。

また、沢山の汗がでると、体の中の水分が抜けて血液がどろどろして、血管が詰まってしまうことがあります。脳の血管でおこると脳梗塞となります。脳梗塞の場合には涼しいところで水分をとって休んでいても治ることはなく、症状が進行してしまいますので、すぐに病院を受診することが必要です。めまいやふらつき以外に、呂律が回らない、半身の力が入らないなどの症状があるようであれば、すぐに救急車をよんで病院を受診したほうがいいでしょう。

日本生活習慣病協会のホームページに注意点など記載がありますので参考にしてください。https://seikatussyukanbyo.com

透析患者さんの脳梗塞


日本透析医学会雑誌 44巻5号2011より


ステートメント

  1. 発症早期には、持続血液透析濾過や腹膜透析、血流を低下させた血液透析など、頭蓋内圧の上昇が小さい透析方法を選択すべきである。(1B)
  2. 抗血栓療法を行う場合、出血性合併症を予防するためには、透析時のヘパリン減量など対策を行う。(2C)
  3. 心房細動に対するワルファリン治療は安易に行うべきではないが、有益と判断される場合にはPT-INR <2.0に維持することが望ましい(2C)
  4. 高度の頸動脈狭窄に対する頸動脈内膜剥離術や血管内治療の適応については慎重な検討が必要である。(2C)


病態

 脳梗塞の発症女の時期は透析終了後6時間以内に多く、透析終了後早期の発症例の方が6時間以降の8症例よりも血圧低下の程度が大きいことが報告されている。

 血液透析が脳梗塞を誘発する貴女としては、除水に伴う血液濃縮と血圧低下、透析後の坐位・立位時の起立性低血圧による脳血流量低下の影響が考えられている。透析中の急激な血圧低下時に、血圧低下に専攻して脳血流量が減少することが報告され、脳血流量の自動調節機構の障害も一因と考えられる。


2025年6月13日金曜日

血管性認知症(VaD)

  1. 血管性認知症とは、脳血管疾患により生じる認知症。記憶障害、失語、失行、失認、実行機能障害が主体である。
  2. 局在徴候である腱反射亢進、病的反射、仮性球麻痺、歩行障害、片麻痺などが併存する。
  3. 診断には画像診断が必須である。
  4. 治療可能な認知症(treatable dementia, 慢性硬膜下血腫、甲状腺疾患、ビタミン欠乏、神経梅毒、うつ病など)を鑑別する。
  5. 神経変性疾患(Alzheimer病、Pick病、Parkinson病)との鑑別と同時に、神経変性疾患の合併例も多いことに留意する。
  6. 治療は脳血管疾患の危険因子の管理など基礎疾患の治療が原則

2025年6月9日月曜日

急性期脳梗塞の抗凝固療法について

 急性期脳梗塞の抗凝固療法について脳卒中治療ガイドライン2021(改訂2023)では

1.発症48時間以内の非心原性・非ラクナ梗塞には、選択的トロンビン阻害薬であるアルガトロバンの点滴投与を考慮してもよい。

2.脳梗塞急性期にヘパリンを使用することを考慮してもよいが、海外では推奨を得るに至っていない。

3.非弁膜症性心房細動による心原性脳梗塞には、出血性梗塞のリスクを考慮したうえで再発予防目的に直接阻害型経口抗凝固薬(DOAC)を投与してもよい。

4.下肢麻痺を伴う急性期脳梗塞症例では、深部静脈血栓症や肺塞栓症の予防に抗凝固薬が推奨される。

以上ののことが推奨されています。DOACは早期に効果もでて、以前のワルファリンの時と比べると出血の危険性も低いことから使用する機会が増えました。また、最近ではワルファリン、DOACなどの中和する薬もかなり高価ですが使用できるようになり、脳出血などを発症した際や緊急で手術が必要な際などにも出血コントロールがしやすくなっています。


拡散強調像(DWI)で高信号となる病気

 脳梗塞では急性期にMRIの拡散強調画像で高信号を呈してきますが、それ以外の病気でも同じように高信号となり、一見脳梗塞のような画像となることがあります。  なんでもかんでも脳梗塞と診断していたのでは、治る病気も治らなくなります。

DWIにおいて高信号となる疾患には

・急性期脳梗塞(2週間以内)

・急性期脳炎・脳症

・てんかん重積状態

・低血糖

・脳出血

・脳膿瘍

・脳腫瘍(リンパ腫など)

・急性メトトレキサート脳症

・Creutzfeldt-Jakob病

・活動性脱髄斑

2025年6月6日金曜日

後脈絡動脈梗塞Posterior choroidal artery infarction

後脈絡動脈梗塞(posterior choroidal artery infarction)は比較的まれな虚血性脳卒中の一種であり、後脈絡動脈の閉塞によって発生します。この梗塞は通常、後大脳動脈(PCA)や上小脳動脈(SCA)の梗塞と共存することが多いですが、孤立して発生する場合、影響を受ける領域は以下のように限定されます:

  • 外側膝状体(lateral geniculate body):視覚情報の中継を担う重要な構造であり、損傷すると視野欠損(同名四分盲や水平セクター盲)が生じる可能性があります。

  • 視床枕(pulvinar):視覚処理や注意制御に関与し、損傷すると視覚認知障害が発生することがあります。

  • 後部視床(posterior thalamus):感覚情報の統合に関与し、損傷すると半側感覚障害が生じることがあります。

  • 海馬(hippocampus):記憶形成に重要な役割を果たし、損傷すると記憶障害が発生する可能性があります。

  • 傍海馬回(parahippocampal gyrus):空間認知や記憶に関与し、損傷すると神経心理学的機能障害(記憶障害や失語症)が見られることがあります。

このように、後脈絡動脈梗塞は視覚、感覚、記憶、認知機能に影響を及ぼす可能性があり、臨床症状は病変の正確な位置によって異なります。

2025年6月2日月曜日

心原性脳塞栓症の再発予防

 心原性脳塞栓症の要望は原因により異なるが、大部分が心房細動でありフィブリン血栓の予防に有効な抗凝固薬が用いられる。一方、血栓以外が塞栓しとなる左房粘液腫(腫瘍塞栓)、感染性心内膜炎(細菌塊)などでは抗凝固薬以外の治療が必要である。

【心房細動による塞栓症の治療】

  抗凝固薬

      1)非弁膜症性心房細動(NVAF): 抗凝固薬 DOACやワルファリン    

       2)心房細動をともなうリウマチ性僧帽弁狭窄症:ワルファリン(PT-INR 2.0-3.0)


左心耳閉鎖術/左心耳切除術

    1)左心耳閉鎖術:経皮的左心耳閉鎖デバイス(Watchman)、塞栓リスクの高いNVAFで、出血リスクが高く長期に抗凝固療法を継続することが困難な症例、デバイス血栓を防ぐため、術後1ヶ月半は抗凝固療法継続する必要がある。周術期合併症として心タンポナーデ、血栓塞栓症、デバイス塞栓

    2)左心耳切除術:胸部開放手術や胸腔鏡下手術

    3)カテーテルアブレーション:心房細動に関連した自覚症状の軽減や生活の質を向上させる効果があるが、脳梗塞や心不全を予防し生命予後を改善させる効果も期待されている。症候性もしくは徐脈頻脈症候群を伴う発作性心房細動、心不全(左質機能低下)を合併した心房細動で左房径拡大が高度でない場合に考慮される。

【機械弁置換術後】

    DOACは使用しないよう勧められている、ワルファリン(PT-INR  2.0-3.0)

【感染性心内膜炎】   

    抗菌薬を開始したうえで外科的手術の適応を判断する必要がある。

【非細菌性血栓性心内膜炎】

    担がん患者ではしばしば抗凝固更新状態が生じる。時に非細菌性血栓性心内膜炎をきたして脳梗塞を起こす。がん治療と凝固異常についてはワルファリンで管理する。

【左房粘液腫】

    下級的速やかに外科的切除

【その他】

    1ヶ月以内の心筋梗塞、28%未満の低駆出率を伴う陳旧性心筋梗塞、30%未満の低駆出率を伴ううっ血性心不全、拡張型心筋症、左室血栓なども抗凝固薬で管理をする。



2025年5月28日水曜日

血栓傾向、出血傾向をきたしうる凝固・線溶系の異常

 血栓症リスクとなるもの

    遺伝性    抗凝固因子欠乏症:プロテインC欠損症、プロテインS欠損症、アンチトロンビン欠損症、リポ蛋白(a)血症

    後天性 抗リン脂質抗体症候群(APS)、悪性腫瘍関連血栓症(CAT)、播種性血管内凝固症候群(DIC)

    薬剤性    性ホルモン製剤、副腎皮質ステロイド薬、トラネキサム酸


出血リスクとなるもの

    遺伝性    血友病、その他の凝固因子欠乏症、von Willbrand病

    後天性    播種性血管内凝固症候群(DIC)、肝機能障害、ビタミンK欠乏症

    薬剤性    抗凝固薬(ワールファリンなど)


原因が分からない脳梗塞がある場合には、上記のこともチェックする必要があります。



2025年5月27日火曜日

脳卒中みたいな病気

 脳卒中以外の疾患であるにもかかわらず、脳卒中に類似した臨床像を呈する病態をstroke mimicsと呼ぶ

stroke mimicsへの遭遇頻度は総じて25%と決して少なくないが、適切な画像検査の追加で脳卒中との鑑別が容易となる。

stroke mimicsの代表疾患には、「末梢性めまい」「低血糖」「痙攣」「精神疾患」「片頭痛」

「敗血症」「脳腫瘍」「多発性硬化症」「脊髄硬膜外血腫」が含まれる

stroke mimicsと脳卒中の鑑別のために、いくつかのスコアが提唱されているが、評価の主要なポイントは「高齢、心房細動、高血圧などの脳卒中の危険因子がない」ことである。

stroke mimicsを必要以上におそれて脳卒中超急性期治療導入を躊躇する態度は勧められない。


stroke mimicの反対で、本来は脳卒中であるが、脳卒中らしくない所見のため、脳卒中以外の疾患と診断されてしまう病態を「stroke chameleons]と呼ぶ。精神疾患や、失神、感染症、急性冠動脈症候群、末梢性めまい、末梢神経障害などが多い。具体的には「意識障害やせん妄が目立ち、麻痺などの局所症状が適切に評価されない場合」に、「失語、失行、失認などの高次脳機能障害を行動異常として5人される場合」や、「脳卒中の合併症として生じた感染症が神経徴候を修飾してしまい、症状の原因疾患として捉えられしまう場合」などがある。


若年者の脳卒中、、、年寄りだけの病気じゃない!

  1.  全脳卒中における若年者の割合は、50歳以下で8.9%、45歳以下で4.2%、40歳以下で2.2%と若年であるほど頻度が低い
  2. 若年者(50歳以下)の脳卒中の病型別割合は、脳梗塞36.7%、TIA5.0%で虚血性脳卒中が41.7%であった。一方、出血性脳卒中の割合は脳出血32.1%、くも膜下出血26.1%と高齢者に比較して多かった。
  3. 脳梗塞の病型別では、若年者ではラクナ梗塞が36.4%と最も多く、高齢者と同様であった。「その他の脳梗塞」は25.1%と2番目に多く、高齢者の2.8%と比較して有意に多かった。
  4. 背景因子として、若年者では、喫煙者と卵円孔開存(PFO)例の割合が高齢者に比較して有意に多かった。
  5. 若年者の「その他の脳梗塞」の原因として、動脈解離、もやもや病(Willis動脈輪閉塞症)、抗リン脂質抗体症候群(APS)の順に多かった。さらに線維筋性形成異常症(FMD)、脳静脈・静脈洞血栓症、多血症、妊娠や分娩、片頭痛、経口避妊薬などがある。
そもそも若年者は脳卒中の頻度が少ないので、診断が見逃されたり遅れたりすることがあるので、注意が必要である。

2025年4月30日水曜日

仕事の効率とテンポ

 ゆったりしたクラシック音楽を聴いているといつの間にか眠くなる。また、テンポのいい曲を聴いているとあっというまに仕事が終わっているなど経験することがあると思います。

手術を行うときもリラックスするための音楽は欠かせませんが、流れている音楽が手術の効率に影響すると思っています。

仕事の集中力を高め、効率よく作業を進めるための最適な音楽のテンポは、一般的に50~80BPMの範囲です。この範囲の音楽は、脳をリラックスさせ、アルファ波を促し、集中力を高める効果があると考えられています。具体的には、ライフハッカー・ジャパンの調査によると、50~80BPMの音楽は脳をリラックスさせ、集中力を高めるアルファ波状態に導く効果があるとのことです。また、株式会社ゴルディロックスのデータでは、リラックスしたい時に心地よいテンポは70~90BPMとされています。

具体的なテンポと効果:
  • 50~80BPM:集中力を高め、精神を落ち着かせる。
  • 70~90BPM:リラックス効果、集中力を高める。
  • 90~110BPM:8ビートの曲で、ミディアムテンポとして一般的。
  • 110~120BPM:歩く際の一般的なテンポ。
  • 110~180BPM:気分転換やモチベーションを高める。
あまりゆったりした音楽では、気分が落ち着き過ぎて時間がかかる。一般的な歩く時のテンポの曲が仕事の効率を高めると思いますが、皆さんどうでしょう

2025年4月22日火曜日

TIAクリニック

 一過性脳虚血発作(TIA)について

一過性脳虚血発作 (TIA) は、一時的な脳の血流不足によって発生する症状です。これらの症状は通常数分から数時間で解消され、脳卒中の前兆となることが多いです。TIAの早期診断と治療は、脳卒中予防において非常に重要な役割を果たします。

TIA患者は早期に脳梗塞を発症するリスクが高く、約10~15%がその後3ヶ月以内に脳梗塞を発症します。特に、TIA発症後の48時間以内が最も重要な期間であり、この期間内に適切な診断と治療を行うことで、脳卒中のリスクを大幅に減少させることができます。また、TIA患者は脳卒中ばかりではなく、心血管疾患の発症リスクも高いといわれ、心臓血管の一連の精査が必要となります。

ABCD2スコアの重要性(TIAの可能性を見極める)
ABCD2スコアは、TIA患者の脳卒中リスクを評価するためのスコアリングシステムです。このスコアは表の表に年齢、血圧、臨床症状、持続時間、糖尿病から構成されており、スコアが高いほど、脳卒中のリスクが高いことを示し、積極的な予防策が必要となります。発症48時間以内、ABCD2スコア4点以上、1週間以内に繰り返して症状がある場合には直ちに専門医に受診されることが推奨されています。ただし、ABCD2スコア3点以下でも安心してはいけません。